東京地方裁判所 平成8年(特わ)4347号 判決 1997年3月31日
本籍
東京都板橋区大原町三番
住居
東京都世田谷区桜上水二丁目二番一三-一〇六号
個室ビデオ店経営
佐藤新一郎
昭和三三年二月二八日生
右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官藤原光秀、弁護人阿部信一郎各出席の上審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役一〇月及び罰金一五〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは金二〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
訴訟費用は被告人の負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、東京都世田谷区桜上水二丁目二番一三-一〇六号(平成六年八月一五日以前は東京都港区海岸三丁目九番一〇号ループM一四〇五、平成四年九月一六日以前は東京都江東区森下三丁目八番五-六〇一号)に居住し、東京都台東区台東一丁目九番四号片岡ビル二階ほか一か所において、「ビッグマン」等の名称で個室ビデオ店等を営んでいたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、売上の一部を除外するなどの方法により所得を秘匿した上、
第一 平成四年分の実際総所得金額が三九七八万六八六五円(別紙1の所得金額総括表及び修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、平成五年三月一五日、東京都江東区猿江二丁目一六番一二号所在の所轄江東西税務署において、同税務署長に対し、平成四年分の総所得金額が五一一万一六三八円でこれに対する所得税額が六二万四四〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書(平成九年押第二六六号の1)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、同年分の正規の所得税額一五七三万八〇〇〇円と右申告税額との差額一五一一万三六〇〇円(別紙4のほ脱税額計算書参照)を免れ
第二 平成五年分の実際総所得金額が四九九六万九七七五円(別紙2の所得金額総括表及び修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、平成六年三月一四日、東京都港区芝五丁目八番一号所在の所轄芝税務署において、同税務署長に対し、平成五年分の総所得金額が六四六万二〇九一円でこれに対する所得税額が八四万六四〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書(前同押号の2)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、同年分の正規の所得税額二〇七二万円と右申告税額との差額一九八七万三六〇〇円(別紙4のほ脱税額計算書参照)を免れ
第三 平成六年分の実際総所得金額が六七八七万九四二八円(別紙3の所得金額総括表及び修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、平成七年三月一五日、東京都世田谷区松原六丁目一三番一〇号所在の所轄北沢税務署において、同税務署長に対し、平成六年分の総所得金額が二六〇万二〇二八円でこれに対する所得税額が一三万四七〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書(前同押号の3)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、同年分の正規の所得税額二七五八万〇五〇〇円と右申告税額との差額二七四四万五八〇〇円(別紙4のほ脱税額計算書参照)を免れ
たものである。
(証拠の標目)
括弧内の甲乙を付した数字は、証拠等関係カード(検察官請求分)の証拠番号を示す。
判示事実全部について
一 被告人の当公判廷における供述
一 被告人の検察官に対する供述調書五通(乙1ないし3、5、6)
一 杉原剛、南英幸、濱島英徳、大山金士郎及び森孝昭の大蔵事務官に対する各質問てん末書
一 大蔵事務官作成の売上金額調査書、仕入金額調査書、水道光熱費調査書、通信費調査書、消耗品費調査書、減価償却費調査書、繰延資産償却費調査書、給料賃金調査書、地代家賃調査書、事務用品費調査書及び領置てん末書(甲36)
一 検査事務官作成の捜査報告書(甲28)
判示第一及び第二の事実について
一 被告人の検査官に対する供述調書(乙4)
一 今井清州の検察官に対する供述調書
一 大蔵事務官作成の管理諸費調査書、支払手数料調査書及び領置てん末書(甲32)
判示第二及び第三の事実について
一 大蔵事務官作成の青色申告特別控除額調査書
一 北沢税務署長作成の証明書
判示第一の事実について
一 大蔵事務官作成の修繕費調査書、福利厚生費調査書及び所得から差し引かれる金額調査書
一 押収してある平成四年分の所得税確定申告書一袋(平成九年押第二六六号の1)及び所得税申告決算書一袋(同押号の4)
判示第二の事実について
一 大蔵事務官作成の損害保険料調査書
一 押収してある平成五年分の所得税確定申告書一袋(同押号の2)及び所得税青色申告決算書一袋(同押号の5)
判示第三の事実について
一 大蔵事務官作成の期末商品棚卸高調査書、広告宣伝費調査書及び特別減税額調査書
一 押収してある平成六年分の所得税確定申告書一袋(同押号の3)及び所得税青色申告決算書一袋(同押号の6)
(法令の適用)
以下の「刑法」は、平成七年法律第九一号による改正前のものである。
被告人の判示各所為はいずれも所得税法二三八条一項に該当するところ、各罪につき、所定の懲役刑と罰金刑を併科するとともに情状により同法二三八条二項を適用し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により各罪所定の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役一〇月及び罰金一五〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金二〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予し、訴訟費用は、刑訴法一八一条一項本文によりこれを被告人に負担させることとする。
(量刑の理由)
本件は、三年分にわたり合計六二四三万円余の所得税をほ脱した虚偽過少申告ほ脱犯の事案であり、ほ脱率は通算約九七・五パーセントの高率に達しているが、他方、被告人は本件犯行を反省し、本件ほ脱にかかる所得税は附帯税を含め完納している。以上のほか一切の事情を総合考慮し、被告人を主文の懲役刑及び罰金刑に処し、懲役刑の執行を猶予するのが相当と判断した。
よって、主文のとおり判決する。
(求刑 懲役一〇月及び罰金二〇〇〇万円)
(裁判官 安廣文夫)
別紙1
所得金額総括表
<省略>
修正損益計算書
<省略>
別紙2
所得金額総括表
<省略>
修正損益計算書
<省略>
別紙3
所得金額総括表
<省略>
修正損益計算書
<省略>
別紙4
ほ脱税額計算書
佐藤新一郎
(1) 平成4年分
<省略>
(2) 平成5年分
<省略>
(3) 平成6年分
<省略>